テアトロ ジーリオ ショウワ

 昭和音楽大学の新百合丘キャンパスの中に、今春オープンしたテアトロ ジーリオ ショウワは、瀟洒な建物で、現代建築によくある威圧感というものがなく、周囲の校舎ともよく融合して、好ましい劇場です。
 収容人員はやや少なめですが、最新の設備を備えているようですし、とりわけヨーロッパの古くからあるオペラ劇場と同じに、観客席が馬蹄形であることが嬉しく思います。これから、コンサート、オペラ、バレーの東京における重要な基地の一つになりそうです。
 今回、そこで行われた2007年昭和音楽大学オペラ公演に行ってきました。演目は「ピーア デ トロメイ」、本邦初演です。本邦のみならず、本国イタリアでも、つい最近まで長い間上演されなかったそうです。
 13世紀イタリアで実際にあった話で、ダンテの「神曲」の中でもとりあげられているそうです。あらすじは、無実の不貞の罪を着せられた領主の妻ピーアが、夫の命令により服毒暗殺されるが、ようやく死ぬ間際に、夫が無実を知り、最後は夫に抱きかかえられて息絶えるというもので、そこに、ピーアに横恋慕し、嫉妬から讒言し、果ては後悔をする義理の従兄弟や、ギベリン党(皇帝派)に属する夫とグエルフ党(教皇派)の弟との戦闘などがからまって、壮大な愛と死の物語となっており、何故、長い間上演されなかったか不思議なほどです。
 各場で歌われるアリアは、すべて美しく、心に染みとおるものでした。タイトルロールのピーアは、弟が生きていると知った時の喜び、無実の不貞の罪を負った無念さ、死に臨みながらも無実が晴らされた時の晴れ晴れしさを、声量のあるソプラノで歌いました。また夫のバリトンは、妻の不貞を知らされた時の心の苦しさ、妻の無実を知った時の後悔と妻への愛を、朗々と歌いあげました。
 このごろわが国でも、埋もれている珍しいオペラを発掘しようという試みがみられます。この試みがさらに広がり、いいオペラを楽しみたいものです。今回は、ちょっと得した気分になりました。

投稿日:2007年11月7日  カテゴリー:未分類

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